幼いうちの今だから身につけたい!
本当に正しい鉛筆の持ち方&動かし方
幼い時期ほど鉛筆を正しく持てていない印象がありますが、大人でも本当に正しい持ち方をしている人は、意外と少ないという調査報告もあります。幼児期に一度、間違ったクセがついてしまうと、なかなか修正できないもの。ここでは、幼児期から身につけておきたい“鉛筆の正しい持ち方”や、“正しく持つことのメリット”を、学研の幼児教室でカリキュラムコンテンツ開発に携わっている青栁菜央さん(株式会社Gakken)にうかがいました。
意外と知らない? 鉛筆の正しい持ち方をおさらいしよう
子どもが鉛筆デビューを果たしたら、保護者としては早く“正しい持ち方”を教えたくなるもの。
「ついこの前までクレヨンを好きなように持って遊んでいたわけですから、鉛筆を持ちはじめた途端に「正しく持ってね!」と伝えても、子どものほうも戸惑ってしまいます。あまり強制すると、“鉛筆で書くこと”が嫌いになってしまう恐れもあるので、最初は、自由に持たせ、思いのままに書かせてあげてください」
そのうち、子どものほうも、いつの間にか“握り持ち”を卒業し、つたないながらも3本指で筆記具を持ちはじめるといいます。
「というのも、鉛筆を握るように持っていると、モノを書くときに腕全体を使うため、疲れてしまうのです。結局、3本指で持った方がずっと楽なんですね。2歳くらいまでは、まだ“握り持ち”でもよいですが、3歳~4歳くらいになると、手指がかなり器用になって、文字の読み書きにも興味を示し出すので、「鉛筆を持って、いつも楽しそうに何か書いているな」と感じたら、そんなタイミングで、「こうやって持ってみる?」と誘ってみるといいでしょう」
子どもに鉛筆の持ち方を指導するときは、保護者ももう一度、“本当に正しい持ち方”をおさらいしてみるのもおすすめです。というのも少し古いデータですが、文部科学省の調査(「青少年の生きる力を育むための総合的調査研究」1998年)に、小中学生では9割以上、30~50代でもなんと7割以上が、鉛筆を正しく持って使えていない、という驚きの報告が残っているのです。この調査では、低年齢のうちに身についてしまった、いわゆる“自己流”の鉛筆の持ち方が、大人になっても固定されてしまうことが推測されています。
鉛筆の持ち方はお箸の持ち方と同様に、幼い頃に間違ったクセがついてしまうと、なかなか直りにくいもの。子どもには、この大事な幼児期のうちに、正しい鉛筆の持ち方をマスターしてもらいましょう!
鉛筆の正しい持ち方
●親指と人さし指で鉛筆をつまむ
●人さし指を鉛筆の削り端から0.5cm~1cmほどの位置に置く
●親指は人さし指より少し後ろに置く
●中指は下から支える
●鉛筆をギュッと握らないよう指の力を抜く
●手のひらに卵が入るくらいの空間をつくる
【正面から見ると】
六角形の鉛筆の場合は、6つの面のひとつ置きに人さし指、親指、中指をそれぞれ置きます。三角鉛筆の場合だと、3面のそれぞれに3本の指を当てるだけなので、子どもにも分かりやすく、幼児期には三角鉛筆で指導するのがおすすめ。
上記の『鉛筆の正しい持ち方』をチェックしてみると、「意外と自分も間違っていたかも…」と感じた保護者も多いのではないでしょうか。基本は、人差し指と親指、中指の3指がバランスよく均等に鉛筆を支え合っていること。どれか一つの指が休んでいたり、逆に力が入り過ぎていたりする状態は間違いです。3本でバランスよく持っていれば、力み過ぎることもなく適度に力が抜けるので、手指だけでなく、腕や肩などもリラックスさせて書くことができます。
間違った持ち方
下は、鉛筆の持ち方のありがちな間違い例。一見すると正しい持ち方にフォームが似ているので、何が間違っているのか分かりづらいかもしれませんが、3指のバランスや力のかけ方が偏っています。子どもがこのような持ち方になっていないか、チェックしてみましょう。
●握り持ち
人さし指、中指、親指で鉛筆を握るように持っています。親指の腹で鉛筆を支えていないので不安定になってしまい、文字を早く書けないばかりか、書いた文字のバランスも悪くなります。
●挟み持ち
人さし指と中指で鉛筆を挟むようにして持っています。この持ち方だと親指がほぼ休んでいる状態なので、鉛筆がきちんと固定されず、力も入らないので文字が薄くなりがちに。
●かぶせ持ち
人さし指の上に親指をかぶせて押さえこむ形で持っています。この持ち方だと力が入り過ぎて手指や肩が疲れやすくなる原因に。ペン先の可動範囲が狭くなるので、文字が雑になりがち。
字を書くときの正しい姿勢
【正面から見たとき】
●両ひじを少し広げる
●鉛筆を持っていないほうの手でしっかりとノートを押さえる
●両脚の間は少し開く
【横から見たとき】
●背中を伸ばし、前かがみにならないようにする。
●背もたれと背中、机とお腹の間を少し開ける
●足の裏を床につける
鉛筆を正しく持つことのメリットとは?
間違った鉛筆の持ち方をしていると、「大人になってから恥ずかしい思いをさせてしまう」と、心配になりますよね。そのためにも子どものうちから“正しい持ち方”を身につけさせたいという保護者も多いはず。でも、正しく持つことのメリットは見た目の良さだけではないそうです。
「なぜ幼児期のうちから正しい鉛筆の持ち方を身につけることが重要かというと、そこには、子どもたちの能力を引き出す、たくさんのメリットがあるからです。
例えば、正しい持ち方をしていると、手指の可動域が広がるので、文字をキレイに書くことができます。そうすると、書くことに自信がつくので、就学後もノートをとることが苦にならず、学習意欲が高まります。反対に、字が汚いまま成長してしまうと、雑、やる気がないという印象を与えてしまい、周りからの評価が下がることもあるかもしれません。ほかにも、正しい持ち方だと、手指に余計な力がかからないので、疲れにくくなったり、鉛筆をスムーズに動かせるようになったりするので、早くキレイな字が書けるようにもなります」
また、鉛筆の持ち方と同様に、文字を書くときの正しい姿勢も幼いうちから身につけておきたい大切なポイントです。
「悪い姿勢で文字を書くと、書いている文字がきちんと見えないので文字が歪んだり、変な持ち方になったりします。また、体に偏った負担がかかるので、長時間の作業ができなくなることも。正しい姿勢であれば、自分の字をしっかりと確認でき、成果が見えることで、ますますやる気もアップします。また、正しい姿勢を身につけておくと、就学後も一定の時間、落ち着いて座っていられるので、授業にも集中でき、楽しい小学校生活にもつながるはずです。
極論を言えば、鉛筆の持ち方が間違っていても字を書くことはできます。でも、このように鉛筆を正しく持つこと、正しい姿勢で書くことには、さまざまなメリットがあるのです。
最初は、なぜ正しく持たなければいけないのか、苦労してまで練習する必要があるのか、理解できない子どももいるかもしれません。そんなときは、「正しい持ち方で書くととってもきれいに書けるね!かっこいいね!」と、ほめてあげながら練習するとよいですね」
鉛筆を正しく持つことのメリット
●キレイな文字が書けるので自信がつく!
鉛筆を正しく持つと、スムーズに鉛筆をコントロールできるようになるので、文字の“止め”、“跳ね”、“払い”がきちんとできるようになります。結果的に文字をキレイに書けるようになるので、書くことに自信がつきます。
●疲れにくくなるので集中力がアップ!
正しく持つと、手指や腕、肩などに過度な力みがなくなるので疲れにくくなります。疲れにくくなれば、長時間書き続けることができ、勉強にも集中できるようになるため、結果的に学力が向上しやすくなります。
●早く書けるようになるので勉強も楽しくなる
正しい持ち方ができると、鉛筆を動かしやすくなるので、読みやすい文字のまま、早く書くことができるようになります。就学後も黒板の文字を書き写すのが苦ではなくなるので、学習意欲もますますアップします。
文字を書くことが楽しくなる! 鉛筆トレーニングのコツ
鉛筆の正しい持ち方やそのメリットが分かったら、いよいよ鉛筆トレーニングのスタート。いかに子どものモチベーションを維持しながら、鉛筆の使い方を伝えていくかがカギになります。
「“鉛筆トレーニング”とはいっても、楽しく遊びながら行うイメージです。子どもに興味を持たせ、やる気を引き出すことが肝心なので、繰り返しになりますが、無理強いは禁物。子どもの手を取り、鉛筆を無理やり持たせるよりも、まず保護者が見本を示すこと。鉛筆を持っている子どもの横で、保護者も鉛筆を持ち、いっしょに絵や図形を描きながら「こうやって持ってみようか?」などと導いていきましょう」
教えるときは、上の記事の『鉛筆の正しい持ち方』や『間違った持ち方』を参考に、子どもがどう持っているのか、その力の加減などもチェックしてあげましょう。
「鉛筆の持ち方は、一度、変なクセがついてしまうと、大人になってもなかなか修正できなくなります。そのため、大雑把にせず、最初から正しく伝えることを心がけてください。また、正しく持てるようになっても、すぐに元に戻ってしまうこともあるので、その都度、我慢強く修正してあげましょう。そして、鉛筆を正しく持てるようになったら、今度は、文字書きの練習をする時期の到来。持ち前の好奇心で、新しい文字をぐんぐん吸収していく子どもの頼もしい姿が見られるはず。ぜひ、子どもといっしょに書くこと、学ぶことの楽しさを体験してください」
幼児に向けた鉛筆の持ち方のアプローチ法を下に紹介しているので、参考にしてみて。
正しい持ち方が楽しく身につく4ステップ
鉛筆トレーニング サポートのコツ
●ほめてやる気を引き出す!
正しい持ち方を身につけるには時間と根気が必要。繰り返し練習する中で、「またできてない!」などと保護者が言い過ぎると、子どもは悲しくなって練習するのが嫌になります。子どものやる気を引き出すためにも、「とってもかっこいい字が書けたね!」「たくさん練習がんばったね」など、肯定的な言葉でほめて認めてあげましょう。
●絵の横に文字を書いて好奇心を刺激する
3~4歳くらいになると図形や文字の形に興味を持ちはじめます。もし、子どもが丸・三角などの図形や、車などの絵を描いたら、近くに「まる」「さんかく」「くるま」などと、ひらがなで添え書きし、読み上げてあげましょう。文字を読めるようになると、次は書きたいという気持ちが芽生えてくるので、子どもの好奇心を刺激し、文字書きへの導入がスムーズになります。
●幼児用の「幼児用ワーク」を活用する
ひらがなや数字を書く練習には、幼児用ワークなどを使うのもおすすめです。運筆力を育むもの、ひらがなや数字を覚えるものなど、さまざまな種類があるので発達段階に応じて選択しましょう。遊び感覚でトライできるものもあるので、楽しみながら言葉や書き順などを身につけることができます。家庭学習を習慣化していくのにも役立つはずです。
★おすすめの幼児用ワーク⇒ こちら(https://www.gakkensf.co.jp/productcat/product-05-child-01/)
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学力向上にもつながるってホント?小学校入学前に身につけたい『運筆力』
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幼児の文字書き練習におすすめの『さんかくえんぴつ』
子どものはじめての鉛筆としておすすめなのが三角鉛筆です。
三角鉛筆は軸が3つの面で構成されていて、ひとつの面の幅が六角鉛筆よりも広いのが特徴。面の幅が広いと幼児の小さな指でもしっかり安定するので、ちょうどよい力加減で持つことができます。なかでも、「学研のさんかくえんぴつ」は、一面ずつ異なる色で色分けされていて、親指、人さし指、中指をそれぞれの色に当てるだけで正しく持てるようになっています。この色分けは、保護者が正しい持ち方を教えるときにも、「人さし指を黄色に置いて」などと、声がけしやすいので便利! 幼児の手で持ちやすく、正しい持ち方も理解しやすい仕組みになっているので、鉛筆トレーニングとして使うには最適です。
さらに、「学研のさんかくえんぴつ」では、鉛筆軸の色分けにカラーユニバーサルデザインを採用。色覚の多様性に配慮し、できるだけ多くの人に情報が正確に伝わるような色が選ばれています。子どもにも保護者にもメリットがいっぱいなので、ぜひお試しを!
「学研のさんかくえんぴつ はじめてのセット」は、太軸の三角鉛筆3本と2軸鉛筆削り、六角消しゴムが入ったスターターキット。鉛筆削りは、太軸の三角鉛筆と、一般的な直径約8㎜幅の鉛筆のどちらにも使えます。消しゴムは、濃い鉛筆でもよく消えて、消しカスもまとまりやすいのが特徴。はじめて三角鉛筆を試す人のために、必要な道具を揃えたセットです。
770円(税込み)
太軸(8.8㎜)の三角鉛筆(6B)3本と、2軸鉛筆削り(ミント)、六角消しゴム(ミント)のセット。鉛筆の芯は柔らかく濃い6B。筆圧が弱い幼児でも濃く滑らかに書けるので、はじめての鉛筆におすすめ。長さは13cmと一般的な鉛筆より短く、小さな子どもでも持ちやすくなっています。[年齢の目安:2・3・4歳~]
770円(税込み)
太軸(8.8㎜)の三角鉛筆(4B)3本と、2軸鉛筆削り(ミント)、六角消しゴム(ミント)のセット。鉛筆の芯の濃さが4Bと、しっかりとした濃さで書けるので、文字や数字を書く練習にも最適。長さ15.5 cmと市販の鉛筆に比べて2cmほど短くなっているのが特徴。[年齢の目安:3・4・5歳~]
770円(税込み)
太軸(8.6㎜)の三角鉛筆(2B)3本と、2軸鉛筆削り(ミント)、六角消しゴム(ミント)のセット。鉛筆の芯の濃さは、小学校の入学時に用意する2Bを採用。長さも一般的な鉛筆と同じ17.7cmなので、入学準備にはもちろん、入学後も長く使い続けられます。[年齢の目安:4・5・6歳~]
監修者プロフィール
青栁菜央さん
株式会社Gakken
出版・コンテンツ事業本部 U5事業部 幼児教材編集課 教室教材チーム