そもそも知育玩具ってなに?
知育玩具で子どもの将来の可能性がグンと広がる!
知育玩具は1950年ごろ日本に伝わり、1970年代の教育ブームで広く普及しました。昔からある商品ではありますが、玩具とはおもちゃのことですから、おもちゃとしての歴史はそんなに古いわけではありません。
なぜおもちゃなのに知育という言葉がつけ加えられ、知育玩具というジャンルが確立されたのでしょうか。その歴史的背景を振り返ってみました。
知育玩具を上手に使い、子どもと向き合うためのポイント
①幼児教育における三育(知育・徳育・体育)について知る
②算数や国語を学ばせるではなく、その基礎となる様々な能力の成長をサポートするという心構え
③与えるだけでなく、まずは知育玩具を子どもと一緒に楽しむことからはじめる
そもそも知育ってなに? 三育を知ろう!
知育玩具の知育とは、知能を高めて知力を育てることです。幼児教育の基本である三育(知育・徳育・体育)の一つに数えられています。
各項目について見てみると、「知育=頭の教育」、「徳育=心の教育」、「体育=体の教育」となります。そしてこれらは独立して発達していくのではなく、互いに連動していると考えられ、「頭」と「心」と「体」の発達はすべてつながっているということです。
知力を育てるためには体を動かして脳に刺激を与え、神経が発達していく必要があります。そして神経が発達することで思考力や判断力が育ち、人の気持ちを考えて道徳的に振る舞うことができるようになります。
知育玩具は子どもの知力を育むおもちゃ
知育玩具には子どもの成長を願う大人の思いが込められている。
3歳頃から芽生える文字や数字などを読みたい、書きたいという気持ちを育み、楽しみながら成長をサポートする
知育玩具と普通のおもちゃの違いは大きく分けて二つあります。一つは知力を育てるために作られている点です。前述したとおり、知力を育てるためには体を動かして脳に刺激を与え、神経が発達していくことが大事なので、実際に物を触りながら体を動かして遊ぶ仕組みになっています。
もうひとつの違いは、子ども自身が遊びたくて選ぶおもちゃではなく、保護者が子どもの成長を願って選ぶおもちゃであることです。
「子どもにとって意味のある玩具を与えることは、子どもの出会う環境を豊かにし、子どもの成長を助ける大事な働きを担います」と無藤先生は言います。
学研のディズニー知育玩具シリーズでは、文字や数などをテーマにしていますが、国語や算数を学ぶというよりも、その基礎になるさまざまな能力を伸ばすために作られています。
また、子どものどんな成長に役立つのかを、「気づく力」「工夫する力」「記憶する力」「柔軟に対応する力」「先を見通し見直す力」「想像する力」「好奇心」「集中して取り組む力」の8項目に分類してチャート形式で示しています。
「たとえば文字の読み書きを例に挙げると、まず筆順を覚える必要がありますが、それにはペンで線をなぞる練習が一番有効です。また、バランスよく書くことも大事です。日本語のひらがなは難しく、ひらがなが書けるようになってもバランスが悪いことはけっこうあります。特に『あ』とか『ふ』などは、大人でもバランスよく書けるとは限りません」
ペンで線をなぞったりバランスよく書くためには、指先をコントロールする力が必要ですし、そもそも文字を書きたいという気持ちになるためには、文字が読めなければなりません。そういった能力や意欲を知育玩具は育んでくれます。
保護者のサポートが大事な知育玩具との関わり方
最初は保護者が一緒に遊び、子どもが楽しみ方に気づくと一人で遊ぶようになる。
知育玩具は保護者が子どもの成長を願って選ぶおもちゃです。したがって、そのおもちゃを選んだ保護者が一緒に楽しみながら、子どもの成長をサポートすることが大事です。
「ほとんどの知育玩具は子どもが最初から一人で遊ぶのは難しく、やり方がよくわからなかったり、仕組みに気づかなかったりします。大人が関わることも必要で、遊び方を指導するというより、まずは一緒に子どもと遊んで楽しむようにしましょう。次第に子どもは自分から遊ぼうとするでしょう。どうすればよいか分からないようならヒントを出して導きます。間違えても何でも『すごいね!』と共感して進めてください」
子どもの気分やタイミングを見て知育玩具で遊ばせる
幼稚園や保育園であれば、先生が子どもに遊び方を指導することもあるでしょう。ただ、家庭では保護者は「先生」にならないほうがいいそうです。子どもにとって家庭は一番落ち着く場所であり、楽しい場所であってほしいと無藤先生は言います。
「知育玩具で遊ぶのは授業ではありませんから、『これで遊びなさい』と言ったらイヤになってしまいます。1日1時間やらなくてはいけないというものではありません。1日5分でも10分でも、子どもの気分とかタイミングに合わせて遊ぶのがよいと思います」
子どもが成長するにつれて、やがて一人でも遊べるようになります。子どもが自発的に遊ぶようになると、遊び方のバリエーションが増え、それにあわせて学びの要素も広がりが出てきます。
「そういう意味では、大人がつきっきりでやり方を教えないと子どもが遊べないというのは、あまりいい知育玩具とは言えないかもしれません。子どもが何となく触っているうちに、自然と遊び方に気づいて、そこからどんどん遊びが深くなっていくのが理想です」
知育玩具を子どもと一緒に楽しむコツを学ぶ
保護者が一緒に楽しみながら遊ぶコツを、無藤先生はトランプ遊びを例に挙げて説明します。
「子どもとトランプ遊びをすると、最初はルールが分からないもの。でも、3~4歳くらいの子どもは負けると悔しがりますから、わざと勝たせてあげたりしますよね」
ここで大事なのは正しいルールを教えることではなく、子どもが遊びを通じて学ぶ機会を与えること。そのために飽きさせず楽しく遊べるように大人がサポートしていきます。
「やがて5歳くらいになると、大人がわざと負けたりするのがだんだんイヤになります。そうすると、勝つためにはいいやり方があるとか、ちゃんとしたやり方があることを自分で考えるようになります。それまではゆっくりと楽しむことです」
大人がルールを教えなくても、子どもは遊んでいるうちに自然とルールを学びます。これからの時代は自分で考えて行動できる人材が求められていきます。保護者が子どもに何もかも教えるのは必ずしも子どもの成長につながりません。一方で、保護者と一緒に楽しく遊んだ思い出は子どもの胸にずっと残ります。
「大学生に話を聞くと、『食後に家族で一緒にトランプをやって楽しかった』とか、そういうことを言う子がけっこういるんですよね。トランプでもゲームでもいいので、基本は子どもと一緒に楽しむことです」
子どもの頭と心と体の発達に最もいい影響を与えるのは、知育玩具を使って家族と一緒に楽しい時間を過ごした経験なのかもしれません。
©︎ Disney
©︎ Disney. Based on the ”Winnie the Pooh” works by A.A. Milne and E.H. Shepard.
©︎ Disney / Pixar
監修者プロフィール
無藤 隆 先生
白梅学園大学名誉教授
東京大学大学院教育学研究科修了。お茶の水女子大学生活科学部教授などを経て、2004年、白梅学園短期大学学長に就任、翌年より2007年まで同大学学長を務める。2017年より現職。教育学のなかでも保育関連や心理学系統を専門とし、保育・幼児教育に関する政府審議会・調査研究会などの座長として公的活動にも尽力する。